すごい才能。

今思えば
あたしにとって一世一代の告白が
彼にとってはいきなりのクライマックス。
好きだ好きだ愛してるなんて
ある日突然言ったって
かなうはずもない
だってあたしは
好きで好きで
仕方ないことを
なんとか我慢して隠していたんだから。
人を好きになるっていうことは
すきだとか愛しているって伝えることではない
大事に思って
愛おしくて
優しくしたり
ひいきしたり
話を聞いたり
触って撫でて
もどかしさに爪を噛んだり
淋しさにマクラを抱きしめて
だけどちょっとづつ近づいたり遠のいたり
揺らいで、くすぐって、繰り返して、慣れていって
差し出して受け取って、分け合って
そうやって一緒に時間をすごして年をとって
重ねて
気持ちを、行為を、出来事を、思い出を
幾重にも重ねあっていくことだった。

好きだということを
言葉じゃない方法で伝えようとしたら
いったいいくつあたしは伝えてきただろう。
すきだって言っていればそれでいいと思ってなかったかな？
あぁ。
ことばなんかじゃもう
すでに追いつかないのに
行動で、心で、ことばじゃない別のもの
それをあたしは
あなたに伝えたい。
簡単なことだから
とりこぼしてしまう。
簡単なことだから
つい後回しにしてしまう。
簡単なことこそやりぬくのは難しい。
簡単だと思う心が
あたしを怠けさせる。


あたしはあなたを好きになって
こんな簡単なことにも気づかないで
簡単なことすらできないまま
生きてた。
なんだか心からはがれたまま
身体だけで
欲求だけで
しっくりこないまま
自分をもてあまして生きてた。
分からないものをわからないまま
受け入れるまで待てないで
やり過ごして
淋しいとないてばかりでした。

あたしはあたしがもってる
このつたない両手と
ちっぽけでどーしようもない
欲望だらけののーみそで
あなたを好きなだけ好きでいよう

あたしにできること
それをやりきる
それだって
やり遂げればきっと
すごい才能。
可能性なんだ
ようは
それを見つけて
小さな光を
死ぬ気で手放さないことなんだ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　愛がさわさわ、こうるさい夜に。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　けえ．