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友達へ。 [コトバのプール]

走り出そうと思ったら
息を止めて
まっすぐ前を見て
ただ
ただ地面を蹴って
腕で
空気を掻いて
なにもかも
わすれて
からっぽで
まっ白になって

前に
そして
もっと前にいくだけ
それだけなんだ

走れ
今だ
走れ

君は言う

だけど
でも
だってね

うつむいた
視線の先には
小さい蟻

気がつけば
夕焼けも燃え尽きて
宵の明星
かじかんだ手で

もう何もつかめない
そんな力なんて
どこにもない
言葉の呪文が
両手を縛ってゆく

ほんとうは
そんなことじゃなかった
もっと
違うことが言いたかったのに

いつも思ったこととは
違うことを
何かを
ごまかそうとして
必死で
話し続けた

そうやって
何を隠そうとしていたんだろう
いまならきっと
うまく言えるけど
あのとき
言葉にならなかったその思いは
もう言葉にしないまま
ただそのまま
まだ両手に持ち続けようと思うんだ

このまま手首ごと
腐って落ちてしまえばいいと思った

その記憶でさえ
いまはそっとなめてみることが出来る

いつまでこうしているのか
さいきんは少し考えるけれど
まだそのときじゃないって
胸を打つ音が聞こえる

そうだねもう治りたいなんて
思わないんだ
ただいまはこの両手いっぱいの
なんともいえない
思いをただそっと感じて
思い返して忘れないで
ただいつもあたしのそばに
置いておこうと思うんだよ

あたしはなにか大事なものを
失ったと思っていたけど
いまこうして思い返してみると
なぜかそんなふうには思えないんだ

よかった
あたしがあたしで

あたしってあたしなんだ
あたしでしかないんだね

いつか「何か」になろうとして
自分が映った鏡を見ているのに見なかったあたしは
ちゃんと今ここで自分で考えて

ここでしゃべって自分の声で笑って、
働いて生きてる

ありがとう。
友達。

簡単なことほど難しい。
だから今日も笑って感謝。
ありがとう。


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共通テーマ:GBA2005エッセイ

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コメント 2

こんばんは!素敵な詩ですね!
囚われていた、自分が何か吹っ切れた感じのする詩ですね!
もともと、人間は裸で生まれて来て、裸で死んでいくんですよね!それを考えると失うものなどないのでは、ないかといつも思うんですよね!!きっと、目に見えないものが、いろいろこころの中に蓄積することはあるかもしれませんが、それがプラスになれば、成長するしマイナスになれば後退するんだと思うんです。
私の考え方ですど。。。でも、とてもこころに感じる詩でした。
ありがとうございました。
by (2006-01-16 22:40) 

ke_co_ltd

>kazeさん
ありがとう!うれしいよぉ。
失うものは何もない、というのは物質的にであって
こころにとっては得たものも失ったものも、すべて記憶として
残るのではないでしょうか?けえの考えですけどね!
by ke_co_ltd (2006-01-28 23:15) 

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