お父さんと歩く。 [親の話]
久々にいえの近くを散歩。
ポッケに小銭を入れて携帯電話を置いて
ぶらぶら、てくてく、歩く。
あしもとは見ない。
空を見て、光を眺めて、風をほっぺに受け取って
ぐんぐん進む。
ある角を曲がって、ふと思った。
この道、パパときたなぁ、って。
ぐぁあ~って巻き戻しで記憶がくる。
パパの右側がけぇの場所で
手をつないで歩くのがキライで
無理やり腕に掴まって歩いた。
休みの日にだらだらしていると、
「おい。かいものいくぞ~けぇ!」って
あたしはばたばたと用意して出かける。
準備する時間とかはなくて。お化粧なんてしていたら
あっという間においていかれるのだ。
何かを話したり、っどこかに行くわけではなくて
歩いたことのない道を歩く。
たまに、会社はどうだ?とか
お母さんのてつだいもしろよ、とか
言う言葉にあたしはうん、うん、って返すだけ。
途中でよさそうなお店があれば一休み
たいていはビールと何かつまむもの。
そして適当な無人販売所で野菜を買って家に帰る。
池尻に家があったときはカフェとかよく行ったけど
ここに引っ越さなきゃいけなくなって
大体半年でパパは寝たきりになってしまったから
そんなお散歩デートは5回くらいしかしなかった。
もっと、生きててほしかったなぁ
もっと無理やり手をつないで歩けばよかった。
こんな夏みたいな天気の日は特にそうやって思い出す。
いなくなっても、ここにいる人。
コメント 0